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September 23 『風の強い日に生まれた子』 Ⅵ 全ての授業が終わり、フローレンスは学校を出ました。
イアン…
さっきの先生の話は、本当だったのだろうか。歩いていると、夢の中の出来事だったような気がします。
とても悲しいはずなのに、どうして涙が出ないんだろう…
フローレンスは、自分の気持ちに戸惑いながら、歩き続けました。そして、気がつくと、家の前まで帰ってきていたのです。
『お母さん…』
顔を上げると、フローレンスのお母さんが、家の前に立っていました。心配そうに、フローレンスを見つめています。
『…おかえり、フローレンス。』
お母さんはそう言うと、そっとフローレンスを抱き寄せたのです。
『お母さん…』
実は、お母さんはすでに、イアンが亡くなったことを村の人から聞いていたのです。
ずっと、フローレンスの心の中にあった重苦しいものが、パチンとはじけました。
フローレンスはお母さんの腕の中で、イアンが死んでしまったということを、ようやく実感したのです。
『…お母さん、イアンが…イアンが…』
一緒に行こうって言ったのに。待っていてって言ったのに。
色んな思いがあふれて、もう言葉になりません。次から次へと涙がポロポロこぼれ、フローレンスはお母さんの胸に顔を押しつけました。そして、大声で泣き出したのです。
『フローレンス…』
フローレンスにぎゅっと抱きつかれたまま、お母さんはただ、背中をさすることしか出来ません。
フローレンス…この子の悲しみの半分でも、私が変わってあげる事ができたなら、どんなにかいいだろうに…
お母さんは少し涙ぐみました。そして、真っ赤に染まった夕焼け空を見上げたのです。
お葬式が行われた次の日、イアンのからだは棺に入れられ、お父さんとお母さんの手で家の裏に埋葬されました。
墓標も何もない、ただ土がもられただけのお墓です。
お母さんは、イアンが生まれた時のことを思い出していました。あの日から今日まで、なんて時間のたつのは早いのだろう…
イアン?お母さんは、あの日あなたと会えてから、ずっと一緒に過ごしてきて、とても幸せだったのよ。今は、それをあなたにきちんと伝えておけなかったのが、とても残念。…だけど、お母さんたちがあなたをとても愛していたこと、分かっていたわよね?
お父さんは、お母さんのふるえる肩を抱きました。悲しくて、やり切れなくて、だけどどうしようもなくて。
イアンが戻っていった空を見上げたお父さんの目に、いつもの鳥の群れが映りました。
…そういえば、イアンもよく、こうして空を見上げていたな…
お父さんはイアンの横顔を思い出しました。そして、とうとうこらえきれなくなり、お母さんを抱きしめ、声をあげて泣き出したのです。
その日も、とても暑い一日でした。村人たちは、今日もいつもどおりの営みを続けています。
イアンがいつも見つめていた、丘からの風景は、イアンが生まれた朝と、なにも変わってはいませんでした。
そんな村をまたひとつ、強い風が吹きぬけていきました。
完
September 22 『風の強い日に生まれた子』 Ⅴ フローレンスがイアンの家に行った次の日から再び、激しい雨が続きました。
そして、ようやく青空が顔を出したその日、フローレンスはイアンが学校に来るのを待っていましたが、イアンは来なかったのです。
午前中の授業が終わりました。フローレンスは立ち上がり、ふと窓の外を見たとき、イアンのお父さんが、学校から出て行く姿を見つけたのです。
フローレンスは、とても胸騒ぎがしました。
まさか、イアンの具合が悪くなったのでは…
そう思うと、心配でたまりませんでした。
午後の授業が始まり、先生がみんなの前に立ちました。
『授業を始める前に、みんなに大切なお話があります。』
フローレンスは、きっとイアンのことだと思いました。
『今日、イアンのお父さんが、学校に来られました。先生もとてもびっくりしたのですが、…イアンは…昨日、病気で亡くなってしまったそうです。』
教室は、シーンと静まり返りました。
『…ずっと、高い熱が続いていたそうです。昨日の朝、お父さんが見に行ったときにはもう、イアンは息をしてはいなかったということです…』
まわりからは、次第にすすり泣く声が聞こえてきました。
フローレンスは、机の下で手を握りしめ、下を向きました。
まさか…
先生の言ったことが、信じられません。
『…それでは…午後の授業を始めます…』
先生の声が、とても遠くから聞こえてくるような気がしました。
『風の強い日に生まれた子』 Ⅳ 毎日のように降り続いた雨でしたが、この数日、晴れています。
フローレンスは、イアンが学校にくるのをとても楽しみにしていました。
だけど、その日もイアンは学校に姿を見せません。
イアンはとても学校が好きなのに、どうしたんだろう…
フローレンスは、学校が終わったあと、家に行ってみることにしました。
『おばさん、こんにちは。イアン、いますか?』
『あら、フローレンス。来てくれたの?』
『はい。しばらく学校に来なかったので、どうしているのかと思って…』
『そう…ありがとうね、フローレンス。』
そう言って、イアンのお母さんは、少し黙り込みました。
『…おばさん?どうしたんですか?』
『…あのね、フローレンス。イアンは今、ちょっと病気で寝ているのよ。だけど、フローレンスが来てくれたら、とても喜ぶわ。』
フローレンスは、お母さんと家の中に入りました。
『イアン?フローレンスが来てくれたわよ。』
すると、それまで横になっていたイアンが、ゆっくりと起き上がりました。
『フローレンス?来てくれたの?』
イアンは、とてもしんどそうです。
『イアン、どうしたの?』
『うん…ずっと、熱が下がらないんだ。』
フローレンスは、イアンの頬に手を当ててみました。
『…ほんと…すごく熱い…』
『うん…』
『寝ていたほうがいいわ。』
フローレンスがそう言うと、イアンはうなずいて横になりました。
『…イアン?だいじょうぶ?』
『ああ…熱が下がったら、楽になると思うんだけど、今は、ちょっとまだしんどいよ。』
イアンは少し、息苦しそうです。
『…早く…早く元気になって、イアン。』
フローレンスはそれだけ言うと、その次の言葉が見つかりません。
フローレンスが黙っていると、イアンは少し笑って言いました。
『だいじょうぶだよ、フローレンス。心配しないで。』
フローレンスは、イアンの笑顔を見ると、よけにつらい気持ちになりました。
その時、お母さんが言いました。
『さあ、フローレンス。もうそろそろ遅いから、おうちに帰ったほうがいいわ。』
『…はい、おばさん…』
フローレンスは、イアンを見つめました。
『…フローレンス。ぼくは、病気がなおったら、すぐ学校に行くから。…だから…それまで…待っていて。』
イアンは、まっすぐにフローレンスを見て言いました。
『うん…じゃあ…またね、イアン…』
そして、フローレンスはお母さんに見送られ、家に帰っていきました。
September 21 『風の強い日に生まれた子』 Ⅲ『イアン、ここにいたの。』
『やあ、フローレンス。さっき畑の手伝いが終わったんだ。』
『そう。からだは大丈夫?』
『うん。今日は風があるから、暑いのもましだし。でも、フローレンスはなんでここに来たの?』
『イアンがいるかも知れないって、思ったからよ。』
『そうなんだ。うれしいよ。』
フローレンスは、イアンの横に座りました。
二人はとても仲のいい友達です。学校でもよく机を外に出して、一緒に勉強したり、本を読んだりしています。
フローレンスは、無口で心の優しいイアンの事が、大好きなのです。
しばらく黙り込んでいたイアンでしたが、ふいに聞きました。
『フローレンスは今まで、この景色の外には行った事がある?』
『え?えーっと…あ、そうだ。多分だけど、おばあちゃんのお葬式の時にね。ずいぶん長い間、バスに乗っていたから。』
『へえ。』
そう言って、またイアンは黙り込んでしまいました。
フローレンスは、イアンの次の言葉を待ちます。
『…ぼくは、今まで一度もこの村の外に出たことがないんだ。』
『そう。だけどこの村の人は、ほとんどそうなんじゃないの?』
またひとつ、風が渡っていきました。
『…今はまだ無理だけど、しっかり勉強して家の仕事も手伝って、たくさんお金をためたら、ぼくはいつか、この村を出て見たいと思っているんだ。』
フローレンスはびっくりしまいた。イアンがそんなことを考えているなんて、思ってもみなかったのです。
『イアン?』
風が、二人を包み込みます。
『その時は、私も一緒に行きたい。』
すると、イアンはじっとフローレンスを見つめました。そして、にっこり笑ったのです。
『うん。一緒に行こう。』
フローレンスは、とてもうれしくなって、大きくうなずきました。
―チチチチ…
上から聞こえてきた鳥の鳴き声に、二人は空を見上げました。
真っ青な空を、無数の鳥たちが、風にのって高く上っていきます。
イアンたちが、うんと小さな頃から見てきた、いつもの風景です。
イアンは、自由に飛び回る鳥たちを見ていると、自分の夢もきっと叶うような気がしました。
空に雷が鳴り響き、まるでバケツの水をひっくり返したような雨の降る日が、多くなりました。
スコールです。過ごしやすかった乾季が終わり、季節は雨季に入りました。
激しい雨が降ると、イアンの家から学校までの道は泥の川と化し、学校に通う事ができなくなってしまいます。
イアンは、学校を休む事が多くなりました。
September 20 『風の強い日に生まれた子』 Ⅱ イアンの住む所には、日本のような四季はありません。その代わり、雨季と乾季があって、雨季は、大雨季と小雨季に分かれます。
そんな季節がたくさん通り過ぎて、いつしかイアンは十二歳になりました。身長はそれほど高くはないものの、手足が長くてスラリとした男の子になりました。
『お父さん、ぼく、手伝うよ。』
『ああ、助かるよ。じゃあ、朝ごはんが終わったら始めるぞ。』
イアンには、お姉ちゃんがひとりいますが、最近、隣の村に嫁いだので、今はお父さんお母さんと、三人で暮らしています。
イアンは、学校が休みの日はいつも、畑の仕事を手伝います。お父さんのお手伝いをするのが大好きなのです。
お父さんお母さんは、そんなイアンを頼もしく思う反面、心配もしています。
実は、イアンはからだが弱いのです。
『イアン、無理するな。しんどかったら、そこの木陰で休んでいいんだぞ。』
『大丈夫だよ、お父さん。』
イアンの家の裏にある畑は、あまり大きくはありませんが、お父さんとお母さんがていねいに手入れをしています。その年も、たくさんのトウモロコシが育ちました。
手伝いが終わり、お昼ごはんができるまでの間、イアンはいつもの場所に行きました。
家の近くにある、小高い丘です。そこからだと、イアンの家や畑はもちろん、ずっと遠くまで見渡せるのです。
イアンは、坂道をのぼって息が苦しくなったので、大きく深呼吸しました。そして、一本の背の低い木の下に座り、ひざを抱えて目の前に広がる風景を見つめました。
そこへ、フローレンスがやってきました。
フローレンスはイアンと同い年の、小柄で大きな目をした、とてもかわいい女の子です。
September 19 『風の強い日に生まれた子』 Ⅰ その日も、 暑い一日でした。
遠くまで広がる真っ青な空とまぶしい日差しの中、とても強い風の吹く日でした。
家畜の牛やニワトリが風に口をつぐむなか、収穫期を迎えた、人の背丈を越す畑のトウモロコシが、風にゆられてザザ…と歌い続けている、そんな一日だったのです。
そんな日の朝、一人の男の赤ちゃんが生まれました。赤道のほぼ真下にある国の、小さな村で、その赤ちゃんは生まれたのです。
無事にお産が終わって、お母さんはとてもうれしく思いました。男の子でも女の子でも、どっちでもよかった。元気で無事に生まれてきてくれたから、もうそれだけで十分に幸せだったのです。
お父さんは、念願の男の赤ちゃんに大喜び。
この子が大きくなったら男同士、一緒に色んな仕事や遊びをしようと、何年も先に思いを馳せました。
赤ちゃんは、イアン・オウコと名付けられました。
お父さんとお母さんの属する部族には、名字というものがありません。イアンというのは赤ちゃん自身の名前。そして、オウコは、風の強い日に生まれた子という意味を持つ、部族の言葉なのです。
お父さんの名前は、エディ・オディアンボ。お母さんは、ジュディ・アルオチといいます。
オディアンボは、夕方頃に生まれた子、アルオチは、曇りの日に生まれた子という言葉です。
イアンは、そんな風習を持つ部族の子として、生まれたのでした。
ようやく投稿ほんとうに久しぶりの、『しっぴつ関係』のカテゴリーです。
今日の午前中、郵便局に寄って、原稿を投稿してきました。
数日前に完成していたのですが、何度か見直していたので、更に時間がかかりました。
自分としては、よく書けたほうだと思います。
前作よりは、ずっと上出来。
まあ、あいさつのようなものです。
ほんの少しばかり、夢とロマンがほしかった^-^;
さ、もう頭から取っ払って、
次はどんなのを書くのか、そっちに集中しようと思います。
今回の、少しずつここに載せます。
もしお時間がおありでしたら、お付き合い下さるとうれしいです^-^
1歳3ヶ月の頃最近のあゆは、すっかり子どもらしくなり、意思表示もよりはっきりしてきて、
なんだかいよいよ、面白くなってきました。
ものを渡してくれるときに、『はい』とか、『どうじょ』とか、
ちゃんとした言葉でのやり取りも、できるように。
ほんの時々(甘えているとき)ですが、『ママー』と呼びかけてくれる事も増えてきて、
わたしはそのたび、うれしい気持ちでいっぱいになります。
あゆ語でも、たくさんおしゃべりしているのだけど、
まだわたしには、その意味は分かりません。
早く、一緒にいろんなおはなしがしたいです^-^
きみといると、ねんねしている時以外、自分の時間なんてないも同然だけど、
きみがいるから、わたしはいつも元気でいられるんだと、
最近さらに、よく思うようになりました。
もうすっかり、安定して歩けるようになり、外ではよく手をつないでいます。
だんだん自我が育ってきて、よく手を振り払われるようにもなってきたのだけど^-^;
きみのあとを追いかけてのち、抱っこの強制収用が、お決まりのコース。 いつも元気でパワフル。絵本と歌が、大好き。
よく笑って少し乱暴もの。だけど、意外とシャイ。
きみはまったくほんとうに、パパママのたからものです。
同い年の、ゆうなちゃんと。
あゆの方が、8ヶ月おねえちゃんです。
September 11 海のそばで先月、引っ越しました。
とはいっても、車で10分くらいしか離れていないところです。
今回は、一戸建て。
結婚してからずっと、住宅事情に恵まれていなかった私達。
こんなところに住んでしまって、いいのかな??
(次がこわい~~)
1階の窓から見た景色。
とても海が近くて、波がざぶざぶと、大音量です。
あゆは、少しさみしそうにも見える。
前住んでいたアパートは、窓の下が駐車場で、人の往来もあったので、
時々通行人に『ううっ!』と呼びかけては、手を振っててもらったりして楽しんでいたけど、
海じゃあね~、ちょっとそれはムリ。
でも・・・
この、記憶には残らない時期を含め、こういったところで暮らすのって、
あゆにとって、とてもいいと思うんです。
海のそばで、のんびりおおらかに育ってくれるとうれしいです^-^
それに、やっぱりアパートと違って広いので、自由気ままに歩き回れて、
足腰の鍛錬にもいいかと。
これまで以上に、どんどん外にも出かけて、
同じ年代の子達に、会わせ続けてあげたいと思います。
しかし、ぶっちゃけ。。。
いつも行ってる子育て支援センター。
よそものの私とあゆにとっては、唯一友達と会える場所です。
でも・・・
もともと、一匹狼というか、人付き合いに不器用なところのある私。
気の合う人じゃないと、やっぱり疲れるんです。
割り切っています。もちろん。
気の合う人も、何人かいます。
Mさんとか、Iさんとか、Aさんとか、いい出会いもいくつかありました。
けれど、世の中には色んな人がいるもので、
嫌な思いをすることも、多々あります。
特に、担当の先生に、それってどうよと思う事がよくありまして・・・
あゆが3歳になるまではお世話になるしと、がまんしているのですが、
もし私だけだとしたら、絶対に行かないところです。
こんな時、あゆがうんと赤ちゃんだった頃を、よく思い出すんです。
4ヶ月になったばかりの頃だったかな、
大阪で、私と2人きりの生活が退屈で、外に出たいと大泣きされた事がありました。
それからしょっちゅう外出するようになったのですが、
その原動力は、あゆのあの時の笑顔。
実家の近くにジャスコがあって、赤ちゃん休憩室によく行っていました。
その頃、まだまだ新米ママだった私は、周りのママさんたちに、
どう声をかけていいのかわからなくて。
だけど、あゆはとてもうれしいみたいで、周囲の人にニコニコ笑いかけていました。
すると、2人連れのヤンママが、『かわいい~!』と、話しかけてきてくれたんです。
その人たちの子供が、1歳半ぐらいだったのかな、とてもしっかりした感じの男の子で、
あゆのほうを見て、ニコニコしていたんです。
すると、あゆもそのお兄ちゃんに気がついて、好奇心一杯で見つめていました。
そのあと、授乳室でおっぱいをあげている時、
あゆはまだ途中なのに、プハッと口を離して、
ひざの上で横になったまま、すごくうれしそうに私の顔を見上げたんです。
その時のあゆのとてもうれしそうな顔が、今の私の力になっていまして。
ちょっとぐらいいやなことがあったって、
あゆが友達に会えればそれで全てOKになったわけです。
なので、明日からもがんばって、通おうと思います。
私自身はヘラヘラしているので、痛い目にあうことが多いんです。
けんかするの、いやだし・・・
だけど、これからは、毅然とした自分でいこうと思います。
September 04 『ことのはため息』ひらり ひらりと まいおちた
うすくて あおい きみのことのは
ひろい上げると 手の中で
さらさらと なくなった
雨上がりの虹
みなもにうかんだ ため息は
風にゆられ しずんでいく
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